2023年1月26日、トヨタ自動車は2023年3月末を以て社長が代替わりする人事を発表しました。
トヨタ自動車は14年ぶりの社長交代で、13年間日本の車業界のトップを務めた豊田章男社長が社長の座を退く理由と次期社長佐藤恒治さんの経歴などについても考察してみました。
豊田章男社長交代の理由
出典:YouTube トヨタイムズより
トヨタイムズで豊田章男現社長は退任の理由についてこの様に述べられていました。
本日の臨時取締役会で本年4月より、会長の内山田竹志が退任し、新会長に私、豊田章男が、新社長に佐藤恒治が就任することを決定いたしました。
トリガーとなりましたのは、内山田会長が退任されることです。トヨタの変革をさらに進めるためには、私が会長となり、新社長をサポートする形が一番よいと考え、今回の決断にいたりました。
クラウンやカローラといったロングセラーが息を吹き返し、86やスープラといったスポーツカーも復活しました。働くクルマ、商用車も大切にしています。
この13年間で、バトンタッチのための土台はつくれた。私は、そう思っております。
次に、佐藤を新社長に任命した理由を述べたいと思います。ひとつは、トヨタの「思想」「技」「所作」を身につけようと、クルマづくりの現場で必死に努力してきた人だからです。トヨタのトップにつく人は、その体現者であってほしいと思っております。
私自身は、どこまでいっても「クルマ屋」です。クルマ屋だからこそ、トヨタの変革を進めることができたと思います。しかし、「クルマ屋を超えられない」。それが私の限界でもあると思います。
彼には若さがあります。そして、仲間がいます。私には、できないことでも、新チームなら、できると思います。一部トヨタイムズより引用
https://toyotatimes.jp/newscast/002.html
内山田会長は退任のタイミングについて「以前より世代交代については考えていて、若い人達から『長くなると老害になりかねない』そういわれる前に」と述べられていました。
YouTubeの配信の中で「クルマ屋の限界」という言葉が出てきましたが、
内山田会長とともに商品づくりをしてきた」としつつも、「どうしても最後はクルマ屋の枠を出ないクルマづくりに向かっていたと思う。『I Love Cars』の情熱が強いゆえに、デジタルかつ電動化、コネクティビティに関して私はもう古い人間だ」「未来のモビリティはどうあるべきかという新しい章に入ってもらうためには、私自身が一歩引くことが今必要ではないか」と述べられていました。
章男社長の13年間の功績を簡潔に
- リーマンショックの影響が自動車業界にも及び、2009年の決算時赤字から翌期には脱却
- ハイブリッド車だけでなく、EV(電気自動車)の開発
- 水素自動車の開発、テスト
(モリゾウの愛称で自らもドライバーとなり、モータースポーツに関わっています) - 移動や物流に次世代の自動運転EV車e-Palette実用化に向けての取り組み
- 実験都市「Woven City」の建設
(暮らしにかかわるサービスを自動運転の電気自動車やAI,ロボットなどを用いて便利にしていく実験都市) - 車のサブスク「KINTO」の提供
ドライバー「モリゾウ」として社長自らハンドルを握る
章男社長は車に乗る事も大好きと仰っていて、「モリゾウ」の名前で自らハンドルを握り、レースにも参戦している事は有名です。
「モリゾウ」というドライバーズネームの由来は、本名では差し障りがあるため、愛知万博(愛・地球博)のマスコットキャラクターとして人気だった「モリゾーとキッコロ」にちなんで「MORIZO(モリゾウ)」と名乗るようになったそうです。
「TOYOTA GAZOO Racing」のWEB限定CMで章男社長はスバルの3代目のインプレッサGRBでドリフトをする姿もありました。
しかしながら、トヨタイムズの中で内山田会長に「かけがえのない人なのでドライバーとしてモータースポーツに参戦するのは反対で、早く若いドライバーにシートを譲って、別の形でモータースポーツに関わってほしい」と言われていました。
また、ドライバー「モリゾウ」らしい社長交代の内示があった事も印象的でした。
章男社長から佐藤執行役員に内示を伝えたのはタイのサーキット場(上)だとか。
章男社長なりにできるだけプレッシャーを与えない様に、深刻になり過ぎない様にと、レース車両の爆音が轟く中、
章男社長「佐藤君ちょっといい?」「ちょっとお願い聞いてくれる?」
佐藤恒治さん「もちろんです!」
章男社長「社長やってくんない?」
佐藤恒治さん「ぇエエエ!?」
佐藤恒治さんはその時はサーキット上での高揚感もあり、「何が起きているのかよく分からない」「これは冗談なんじゃ…」「何がこの後待っているんだろう」と思ったとの事です。
次期社長の佐藤恒治さんはどんな方?
佐藤恒治さん プロフィール
生年月日:1969年10月19日
年齢:53歳(2023年2月時点)
出身地:東京都
出身大学:早稲田大学 理工学部
役職:トヨタ自動車 執行役員(2023年2月時点)
- 高級車ブランド、レクサスLC開発主任
- レーシング事業、トヨタGazooRacing設立者
- スポーツカーブランド、GRヤリス等の生みの親
- 某車アニメで人気が爆発したAE86を所有
- 人生の夢はセリカ復活(ラリーなどのレースに参戦していたスポーツカー)
佐藤恒治さんはエンジニア出身の方で、車が好きなのは勿論のこと「乗る人が笑顔になる車を作るのが好き」と仰っていました。
レクサスのBEV(バッテリーEV車)の開発の際に章男社長とテスト走行している時の映像がYouTubeにアップされていました。
まるで少年の様にレクサスの開発車両をテストドライブするお二人の雰囲気が印象的でした。車好きなのが伝わってきます。
なぜ佐藤恒治さんを新社長に任命したのか
●トヨタの思想(トヨタの生産方式)を体現できる
佐藤恒治さんは入社してからずっとエンジニアとして現場でトヨタの思想に触れてきた方です。
トヨタの思想を一言で言うと、
1円単位でのコストダウンに関する考え方や自社で部品在庫を持たないなど、今よりも次に何が向上できるかという考え方。
●車が好き
SNSでは某車系アニメで有名になった昭和の名車AE86を勢いで買ったエピソードがあります。
車が好き、車を作るのが好き、乗る人が笑顔になる車を作るのが好き。
かつて人気のあった自社のスポーツカーを復活させたい。
●年齢が若い
佐藤恒治さんは現在53歳。章男社長が社長に就任した年齢とほぼ同じです。
章男社長は「(社長交代に関して)新しい事に挑戦するには若さと情熱が必要」とトヨタイムズで述べられていました。
佐藤新社長のこれからのトヨタ自動車
章男社長は佐藤新社長に『ひとりで経営しようと思わずに、チームで経営してほしい』と伝えていました。
トヨタイムズ、佐藤新社長のあいさつより引用
新チームでは「継承と進化」をテーマに、創業の理念を大切にしながら、「商品と地域を軸にした経営」を実践し、モビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジに取り組んでまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
https://toyotatimes.jp/newscast/002.html
豊田社長からもありましたとおり、新チームのミッションは、「モビリティ・カンパニー」への変革です。その根底にあるのは「すべての人に、移動の自由を」という願いです。
これからのクルマは、モビリティとして、インフラをはじめとする社会システムの一部になっていきます。
少しデータが古いですが、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会が発表している2021年の新車販売台数(普通乗用車)によると日本のハイブリッド車の割合は42.8%で、PHEV(充電できるハイブリッド車),EV(電気自動車)は両方を足しても2%未満です。
一時期はEV(電気自動車)の普及が諸外国から遅れを指摘されることも増えていましたが、
トヨタは各国のエネルギー需要に応えると宣言しています。
しかしながら、欧州では2035年にガソリン車など内燃機関車の販売を事実上禁止することで合意しており、あれだけEV車を強く推していたにもかかわらず、ドイツの外務省は「ガソリン車販売禁止」に対して反対の意を表明しています。
同国のBMWはトヨタが開発している水素を燃料とした自動車の事業に対して技術提携し始めました。
欧州では2035年ガソリン車販売禁止に対して延長を申請した国もあります。
「EV車の開発はするけれども、ガソリン車販売禁止は早急には無理だった」感が否めませんよね。
自動車業界は「100年に一度の大変革の時代」に入っていると言われていますが、トヨタは住まいや街のインフラ、物流に対してEV車や自動運転、AIなどを取り入れて便利な世の中になる様開発に注力しています。
章男社長が13年間をかけて作った土台を基に佐藤新社長の手腕に期待します。
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あなたのカーライフが良くなります様に。
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